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中小企業診断士の報酬についての考え方

中小企業診断士の仕事としては、企業や個人に対する経営診断・指導を行うコンサルティング活動、雑誌その他への執筆活動、講演や講師活動等があげられます。コンサルティングを利用しようとする企業、または個人が頭を悩ますのは、

コンサルタントへの報酬を、どのくらい払えばよいのだろうか?

コンサルティング料が高いのではないか?

といったことではないでしょうか。

コンサルティングの成果は眼では見えにくいものが多い上に、時には数字さえも分かりづらい場合があります。またクライアント(相談者、中小企業者)の状況やニーズも様々で、かつコンサルタントの能力・経験・熱意等も様々なため、一概に答えを出すことはできませんが、当協会の基本的な考え方は次の通りです。

コンサルティング依頼のパターン

中小企業診断士へコンサルティングを依頼する時のパターンとしては図表のような3つのパターンがあると思われます。 

「顧問契約型」は、経営者の相談や諮問を受ける役職としてコンサルタントを活用しようとするものです。継続的にコンサルタントが企業を定期訪問し、コンサルティングを行う契約がされることが多いようです。
「プロジェクト型」は、あるひとまとまりの経営課題の解決を目的として、期限を明確に決めた契約がされる場合です。
「窓口相談型」は、比較的軽い経営課題について1~2回程度の相談を行う場合が多いようです。

依頼の事例とパターン コンサルティング内容 報酬のタイプ
【顧問契約型】
「今後、定期的に経営の相談にのってください」
「定期的に、当社社員の教育をしてください」
「定期的に、会社の将来の状況を診断して、経営面の助言が欲しい」
○回/月の継続訪問
(1~6時間/回)
「時間単位当たり報酬型」
「成功報酬型」
【プロジェクト型】
「ある課題解決のため支援してください」
「当社の現況を診断し、今後の戦略についての助言が欲しい」「今度の社内教育の講師をしてください」
「新商品の市場調査をして欲しい」
○回/期間の訪問
(課題達成、報告提出)
「定額報酬型」
「時間単位報酬型」
「成功報酬型」
【窓口相談型】
「ちょっと経営面の相談があるのですが・・・」
1~2回の訪問面談
(0.5~3時間/回)

コンサルティング報酬の考え方

タイプ 内容 備考
定額報酬型 ひとつのプロジェクトや業務を完成することに対して報酬を支払うもの。契約期間の長い場合は手付金や中間金を支払うこともある。 <メリット>
依頼側にとって、仕事全体の費用が明確になる。
<デメリット>
コンサルティングの完了が不鮮明な場合には適さない。
時間単位当たり報酬型 コンサルティングの活動時間や投入時間と時間単位(チャージレート、○円/時間)に基づき報酬を決定する。月毎に請求、支払いをすることが多い。
(報酬)=(実働時間数)×チャージレート
(報酬)=(予想時間数)×チャージレート
※時間単位は1時間、1稼働日、1週間、1ヶ月等
<メリット>
報酬の計算と請求が容易かつ明確になる
<デメリット>
報酬の基礎がコンサルティングに使われた時間であって、達成された仕事ではない。
成功報酬型 診断・助言事項を実施した後の実質的な成果に対して、その定率分または定額分を支払うもの。診断時に一定金額を、残金を後日現金またはストックオプション等で支払う。 <メリット>
依頼側にとって、業績に応じて支払いが発生するので、資金力に乏しいベンチャー企業等に適する。
<デメリット>
業績評価や成功の解釈が不鮮明な場合には適さない。

報酬に係わる調査結果等

社団法人中小企業診断協会が平成6年11月に調査したコンサルティング・フィーの状況は次表のようになっています。これは業務歴6~20年の診断士を対象にアンケート調査した結果ですが,回答者の63.4%が顧問契約先を有しているようです。
顧問先への訪問は、1社につき1ヶ月平均3.4日で、顧問料は1社平均で月14万円となっており、この調査結果を基に(社)中小企業診断協会として推奨する報酬を以下のように定めています。

コンサルティング分野別報酬額(1日5時間)

活動の種類 最多額 最高額
経営診断(1日当たり) 10万円 30万円
経営指導(1日当たり) 10万円 20万円
調査・研究(1日当たり) 5万円 20万円
講演等講師(1時間当たり) 5万円 30万円
執筆(1枚当たり) 3千円 5万円

(「中小企業診断士の活動に関する調査結果報告」企業診断ニュース94/12、(社)中小企業診断協会発行より)

協会として推奨する中小企業診断士報酬(交通費を含まず)

活動区分 報酬額 備考
経営診断指導(1日当たり) 10万円
(1日5時間)
但し、診断報告書作成料、診断報告会料を別料金としている場合もある
講演等講師(1時間当たり) 6万円 但し、テキスト、原稿料等を別料金としている場合もある
経営指導顧問(1ヶ月当たり) 10万円

(「診断士手帳2001」、(社)中小企業診断協会発行より)

各士業の報酬制度

中小企業診断士だけでなく、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士等それぞれの専門家も、専門業務分野のコンサルタントとして活躍されています。
ここでは中小企業にとって比較的身近な税理士・社会保険労務士の報酬規定例を次表に示します。従来、各士業では所属する士業団体等で定めた報酬規定が所管大臣の認可を得て、広く利用されてきました。

基準としての報酬規定は、依頼者にとっては業務を依頼する際の費用の目安となり、また専門家にとっては報酬に関する依頼者の不安を取り除き、依頼者との信頼関係を築くことにより報酬に関するトラブルの回避が可能となるなどの効用がありましたが、専門家間における競争を活性化するという規制緩和の流れを受け、この報酬規定は廃止されました(次表は参考資料として掲載)。
専門家 顧問契約報酬 個別契約報酬 相談業務報酬 備考
税理士 2~7万円/月
(取引金額による)
6~30万円/月
(取引金額による)
2万円/時間 最高限度額
社会保険労務士 2~22万円/月
(人員規模による)
5~150万円/月
(手続きによる)
1万円/時間 標準額

米国のストックオプションなど報酬制度の現状

米国のハイテク産業が集積している地域では、弁護士・会計士や弁理士をはじめ、投資銀行、コンサルティング、事業性・企業価値の評価、人材派遣、契約生産、安全規制対処、事業所貸し等多様な創業向け専門サービスが発達しています。
これらの多様な専門サービスは、互いに分業し、ネットワークを形成することにより、相互にリスク分担を行うとともに、その見返りとして、大きな成功報酬を得ることがあります。

米国において、ベンチャー企業支援の実績を有する大手法律事務所では成長可能性が極めて高いと判断され、ベンチャーキャピタリストの支援を得ているベンチャー企業に限り、現金で受け取るべき正当な対価100%のうち、一定部分(通常はサービス対価の50~75%)を現金で支払うことを要求し、残りの部分を株式、ストックオプション等で受け取る(スタートアップパッケージ)ことも行われています。

今後に向けての提言

コンサルティングにおいては、依頼の内容や仕事の目的について充分議論し、確認しておくことが、まず大切となります。顧客である中小企業者の満足が第一ではありますが、コンサルタントも万能ではありません。
コンサルタントの「できること」と、「できないこと」を、双方で確認・区別しておくことが、コンサルティング依頼の初期に求められます。そして、「できること」について、中小企業者が具体的な成果を要求することもよいでしょう。

コンサルティングの見積書を取ってみよう

日本人には、「お金は汚らわしいもの」という伝統的な考え方があるためか、込み入った報酬の話を避ける場合もあるようです。しかし、コンサルティングも商売ですので、この部分がはっきりしないと、双方とも満足が得られにくくなります。

次表に、コンサルティングの報酬案のガイドラインを示してみました。コンサルティングは、中小企業者の依頼業務内容、範囲等により、またコンサルタントの能力・識見・熱意等により、その報酬レベルも大きく変わるものです。このガイドラインも、一律的に決まったものでありません。コンサルティングの見積書を取り、相互に委託内容を確認しつつ議論することが大切と思われます。

タイプ 報酬案
定額報酬型 5~数百万円/1つのプロジェクト全体
(プロジェクト規模による)
時間単位当たり報酬型 5~30万円/月
2~10万円/日
0.5~6万円/時間(投入時間については協議)
成功報酬型 診断手付金として○万円(一定金額分の10%~33%)、診断終了時に○万円(一定金額分の残)、診断・助言事項を実施した後の改善成果の○%(10%位)を○年間支払う。
ストック・オプション型 診断契約金の50~75%を現金で支払い、残金を株式・ストックオプションで支払う。(ベンチャー企業のみ)

知識・情報はタダではない!

環境変化が激しく、自己変革やスピーディな対応が求められる現在、適切なコンサルタントを中小企業者が柔軟に使って、経営成果を得ることが企業継続・発展につながると考えられます。我が国では「サービスは無償」という考え方が一部にありますが、中小企業診断士の専門的な知識、サービス、判断等についても、正当な対価への相互理解が進み、中小企業者と中小企業診断士の相方に、深い信頼関係が醸成されることが期待されます。

<参考文献>
  1. 「コンサルタントを使って会社を変身させる法」 日仲健著(同友館)
  2. 「経営コンサルティング」 M.クーバー著 水谷栄二監訳(生産性本部)